第6章 禁じられた遊び
「このままほっといたら、また残った霊どうしが共食いをして……そしたら……そしたらどんどん強くなってる、最後に一番強い霊が残っちゃうんじゃないの!?」
ふと、ファイルへと視線を落としていたナルが驚いたように目を見開かせて麻衣を見た。
「……いま、なんて言った?」
「へ……」
「『共食いをして一番強い霊が残る』……?」
「う、うん……」
「それが、どうしたの……?」
ナルは珍しく驚愕したような目と表情をしていた。
「ナ……」
「……なんてことだ。もしかしたらこれは、霊を使った蠱毒だ……!」
聞いた事のない言葉が飛び出した。
あたし達は眉を寄せていたが、ナルの言葉を聞いていたリンさんまでもが驚いた表情をしている。
「こどく……って?」
「呪詛の一種だ」
「呪詛ぉ!?」
「呪詛って、また!?」
呪詛は前回の調査先、湯浅高校でもあったものだ。
今回もまた呪詛が関係しているなんて、思ってもいなくて全員が目を見開かせている。
「中国に伝わる古い呪法だ。たぶん、ほとんど現存してないだろう」
「そんなに、古いものなの……?」
「ああ。呪詛には人形や呪符など色々なものを使うが、生き物を使う方法がある……それが蠱毒だ。普通使うのは昆虫───金蚕という虫が代表的だが、これが実在になんという虫なのかは確かじゃない。他にも蛇や百足などを使う。これらの虫を壺の中に入れ、土の中に埋める。何ヶ月かして掘り起こすと虫は共食いをして一匹だけが残っている……その残った虫を使う呪法だ」
あたしが知っているのは人型の呪詛だけである。
湯浅で起きた事件も人型であったが、まさか虫を使う呪法があるとは知らなかった。
「虫は呪者の家にとりつき、莫大な財産をもたらしてくれるが、かわりに定期的に一人人間を殺してあたえなければ───主人を食い殺す」
ナルの言葉に背筋が凍る。
そんな危険なものが虫だなんて……と。
「虫を養うことが出来なければ、虫がもらたしてくれた財産に利子をつけて金製、銀製の品物に代え道に捨てる。これを嫁金蚕というんだが……」
「でっ、でも。そんなの落ちてたら誰かが拾っちゃわない?」
「しかも拾った人はそんなものとは知らないから……」
「食われちまうわけね……」