第6章 禁じられた遊び
「ジョンと安原さんが行ったの!あそこ危ないのに、とめなきゃ……!」
「綾子、行って!」
「でも、あんたら二人で……」
「だいじょーぶ!ぼーさんに退魔法教えてもらってるから!」
「不動明王ナントカってやつ、覚えてるから!」
こういう時、覚えていて良かったと思う。
夢の中のナルの言葉に助かったと思いながら、綾子に早く行くように急かす。
「……わかった。じゃ、これも覚えて、九字よ。『臨兵闘者皆陣烈在前』……いい?」
綾子はネイルが施された長く細い指で、空中に線を描く。
指の動きと言葉を覚えてから、あたしと麻衣は綾子に頷いてみせた。
「不動明王呪を唱えたあとにやりなさい。すぐもどるから!」
綾子は飛び出していき、あたしと麻衣だけが保健室に残る。
彼女が行ったのだから取り敢えずあの二人の身は大丈夫だろうと息を吐き出す。
あとは、残りの鬼火がいる場所……二階の渡り廊下と2ー3の教室。
あそこに誰か近づかなければいい。
「結衣」
「……ん?」
「ナル達に、二階の渡り廊下と2ー3に近づかないように言ってきて」
その言葉にあたしは勢いよく飛び起きた。
あたしがもしナルたちの元にいけば、保健室には麻衣一人だけになってしまう。
「麻衣を置いていけない!ここにも鬼火がいるんだよ!?」
「でも、ナル達は知らないんだよ?他に鬼火がいるのを」
「でも……っ」
「お願い、お姉ちゃん」
麻衣はとても狡い。
あたしが『お姉ちゃん』と呼ばれたら、なんでも言うことを聞いてあげたくなるのを知っているのだから。
ワガママで少しズル賢い妹に溜息を吐き出した。
「……もし危ないと思ったら保健室から直ぐに出るんだよ。あと、綾子に教わった九字……だっけ?それとぼーさんの退魔法もちゃんと」
「分かってる分かってる!お姉ちゃん、急いで」
「こんな時ばかりお姉ちゃん呼びするな!もう!」
痛む頭を擦りながら、あたしはベッドを飛び出してから保健室を出た。
麻衣のことは気になるが、直ぐに戻ればいいだけのこと。
保健室から会議室までが遠いような気がした。
それと走る度に頭と背中に鋭い痛みが走り、目眩がしてしまう。
(早くしないと……)
ふらついてしまう。
痛さで体がふらつき傾いた時だった。