第6章 禁じられた遊び
犬は勢いよく首を振ると、口にしていた机を放り投げた。
その机は男子生徒に当たってしまい、また悲鳴が教室の中に響いていた。
「きゃあっ!」
犬がこちらを向いた。
あたしは思わず麻衣の前に立ち、犬を見たが体が震えていた。
「結衣!」
震えていた身体を、ぼーさんが抱き寄せてきた。
そしてぼーさんはあたしと麻衣を廊下へとやる。
犬はそれを見て、ニヤリと笑った。
そして犬はあたし達を見たまま、その姿を消したのだった。
「……なんですの、今の霊は……。まるで実体のような……」
「───先生、松山先生」
あたし達が呆然としている中、やはりナルは冷静だった。
そして同じように呆然としている松山に声をかけている。
「救急車を呼んでください。怪我をした生徒がいます」
「……あ、ああ」
松山は唖然としながらも、慌てて廊下を走って行く。
それを見送りながら、あたしは先程の犬が笑っていたのを脳裏に浮かべていた。
(怖かった……)
あの犬の全てが恐ろしかった。
「……ねえ、いまのって……この間のと同じ犬だよね……?」
「だと思うが……なんだ、あのデカさ。───強くなってるんじゃないか……?」
「急激に……?」
驚いているあたし達の背後で、小さな悲鳴が聞こえた。
慌てて振り返れば、真砂子が倒れそうになっていたのだ。
「真砂子!?」
「真砂子!?どうし……」
駆け寄ろうとして、目眩がした。
そこであたしの目の前の光景が一変していたのだ。
(な、に……これ!?)
薄暗い校舎だ。
その中にあの鬼火がいて、あたしは息を飲んでしまった。
(昨日の、夢の鬼火だ……)
鬼火の元に、たくさんの人魂が集まっていた。
次々とその人魂は鬼火に食べられてしまっていて、あたしは目を瞑ろうとして、あるものを見てしまった。
(……え)
人の形をした人魂が鬼火に食べられようとしている。
その姿は知っている人物だった。
(坂内くん……!!)
彼ら必死に手を伸ばしていて、何かを叫んでいる。
そして微かに彼から声が聞こえた。
「た、すけ……」
コプッ……と音を立てて坂内くんが飲み込まれた。
まさかの光景に、あたしは口を手で塞いで震えてしまう。