第6章 禁じられた遊び
麻衣とあたしは揃って、松山に頭を下げてから逃げようとした。
だが松山はそれが気に食わなかったのか、食ってかかるかのように叫んだ。
「───幽霊だなんだと馬鹿な迷信に振り回されるやつがどうなるか教えてやろうか!?」
「なんですか?」
「うちの学校にもいたんだよ。オカルトだかにかぶれて悲惨な末路を辿った奴が!」
「……それは坂内くんのことでしょうか?」
「なんだ、知ってるのか?ああならないように気をつけるんだな。奴もあの世で後悔してるだろうよ!」
その物言いに腹が立った。
まるでオカルトを信じたから死んだのも仕方ないというような言い方である。
坂内くんが学校を恨んでいるというのもわかる気がした。
教師たちが亡くなった生徒にたいしてこんな言い方をしているのならば、坂内くんが生きている時はもっと酷言い方をされたはず。
「松山先生は、まるでオカルトなどを信じたから死んでも仕方ないみたいな言い方をされるんですね」
「それに、先生は坂内くんが死んでしまったことが残念ではないんですね」
「なにい?誰がそんなことを言った!?」
「そういう風にしか聞こえませんでしたけど!」
「先生の言い方そういうことなんですよ!!」
あたしと麻衣の発言に、松山が飛びかかって来そうな勢いで何かを言おうとした時であった。
「きゃあああっ!!」
近くの教室から悲鳴が聞こえた。
それと同時に凄まじい物音、立て続けに聞こえる叫び声。
「な、なんだ!?」
狼狽える松山を置いて、あたしと麻衣は走り出した。
悲鳴が聞こえてきた教室からは、今も叫び声が止まずにひっきりなしに聞こえてくる。
「おう、結衣、麻衣!」
「ぼーさん!」
叫び声を聞きつけたのはあたし達だけではなかったようで、ぼーさんたちも走って来ていた。
「なにがあった?」
「わかんない。あたし達もいま……」
勢いよく扉を開けて、あたしは唖然とした。
犬がいたのだ。
初日に緑陵高校で見たあの犬が、前よりも大きくなってそこにいた。
「う、そ……」
後ろに下がると、ぼーさんの身体に当たった。
「犬……」
散乱する机や椅子に勉強道具。
怯えてあちこちに身を潜める生徒たち、そして犬は机を潰したように咥えていた。