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ハツコイソウ【ゴーストハント/滝川法生】

第4章 放課後の呪者


「う、うん……あの、それと……」

「ナル、産砂先生もきてるよ……」

「産砂先生?」


あたしの言葉に、ナルが軽く目を見張る。
すると産砂先生が大きな胡蝶蘭の花束を手にしながら、申し訳なさそうに病室を覗いた。


「あの……ごめんなさい。来ては行けなかったのかしら」


産砂先生を見たナルは、少し硬いような表情になる。
どうしたのだろうかと思いながら、ナルが入るように言うので三人を病室の中へと招き入れた。

タカと笠井さん、そして産砂先生はベッドの傍の椅子に座り、あたし達は壁に寄りかかって様子を見守る。


「……高橋さん、それに笠井さん。二人ともぼくが陰陽師だという話をきいた?」

「なに、ソレ?」

「きいたよ」


タカはそんな話は知らないに決まっている。
だってあたしと麻衣が、ナルが陰陽師だと言ったのは笠井さんだけだから。


「笠井さん。それを、だれかに話した?」

「……うん。恵先生に……いけなかった?」

「今回、麻衣と結衣は妙にさえたカンを発揮してくれたんだが、そのことは?」

「話のついでに……きいたと思う」

「だれかにいった?」

「……恵先生に……」


笠井さんとナルの会話を聞いていた産砂先生は、何処か気まずそうにしている。


「わたしが聞いてはいけなかったのかしら。でも、わたしはほかの人にはいってませんから……」

「……そうですか。ついでに一つ、確認させてください。先生の母校はどちらですか?」

「……わたしでしたら、故郷の大学を卒業しましたが」

「ご出身はたしか、福島でしたね」

「はい」


ナルの言葉に、何度目か分からないが麻衣とまた顔を見合わせてしまった。

産砂先生の出身はてっきり東京だと思っていた。
しかも湯浅の卒業生なんだとばかり……。


「東京へは教師になってから、はじめてこられた?」

「ええ、そうです」


その言葉に、ナルは広げていたファイルを閉ざした。
彼のその腕には点滴の管が付けられていて、それに眉を少しだけ寄せてしまう。


「それでわかりました。ありがとうございました。現在学校でおこっている問題は解決できると思います」

「……あの、解決できるって?」


笠井さんは戸惑ったように、少し不安げにしていた。
そして震えたような声でナルに訊ねる。
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