第4章 放課後の呪者
「そういえば、ナルとケガしてたでしょ。ちょっと見せなさい」
お節介焼きな綾子は、ナルに声をかける。
だがナルは何も返事をせずに、パイプ椅子に座ったまま俯いている。
「ナル?どうしたのよ、気分悪い?」
「綾子?」
「どうしたの?ナル?」
あたしが呼んでも反応がない。
マンホールの中に落ちた時に何処かぶつけて気分が悪くなったのだろうか。
そう思っていると、綾子が『ねぇ……』と声をかけてナルの肩に触れた時だった。
ゆっくりとナルの身体が傾く。
倒れそうになった彼を、リンさんが慌てて受け止めた。
「──ナ、ナル!?」
「動かさないでください。救急車を」
その後、ナルは緊急搬送された。
理由は分からない、何故なのかもリンさんは説明してくれなかった。
ナルが搬送され、リンさんはその付き添い。
ベースは二人がいなくなって、ナルが倒れたせいなのか静寂が満ちていた。
(なんでナル、倒れたんだろう……)
具合が悪かったのだろうか。
それともほかに何かあったのだろうか。
そう考えていれば、ぼーさんがベースに満ちた静寂を破る。
「──とにかく、まず人形を処分しよう。それからオフィスにもどってリンからの連絡を待つ。ベースはナルちゃんの指示があるまで、このままにしておく。どうだ?」
「さいですね」
「……いいわ」
心配である。
そう思いながら麻衣の方を見ると、暗い表情になっていた。
ナルは麻衣がマンホールの中に落ちそうになったのを助けて、そして一緒に落ちたと聞く。
もしかしたら、いやきっと麻衣は自分を責めているはず。
「麻衣、大丈夫だって」
「結衣……」
麻衣の背中をさすっていれば、ぼーさんがこちらに来て麻衣の頭を少し雑に撫でた。
「まず、できることをやっちまおう。だーいじょーぶ。たいしたことないって」
「……うん……」
「あのナルだよ?直ぐにピンピンするって」
「そーそー、結衣の言う通り。それにやることやっとかないとおこられるし」
「はうあ!」
「それが一番怖い」
ぼーさん達は人形を燃やした。
その灰を集めて、近くの川に流して人形の処理は終わった。
オフィスに戻ると、リンさんから連絡があった。
ナルは近くの総合病院に搬送されて、明日面会に来るなら来ても大丈夫という。