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ハツコイソウ【ゴーストハント/滝川法生】

第4章 放課後の呪者


ぼーさんは安堵したようにまた息を吐き出す。
場違いな考えではあるけれど、彼に心配してもらえたことや抱き締められた事が嬉しかった。


(麻衣に言ったら……怒られるかな)


甘い考えを振り払いながらも、あたしはぼーさんとジョンと共に会議室に戻った。

会議室には既に麻衣達がいたが、何故か麻衣は綾子に手当を受けている最中だった。


「なにがあったの!?」


驚いたあたしは麻衣に詰め寄るように近付いた。
麻衣は苦笑を浮かべながらも、何が起きたのか説明をしてくれたが、それにあたしやぼーさんは絶句する。


「マンホールに落ちて、そこに昨日の女が現れたあ!?」

「うん。リンさんが来てくれたから何とかなったよ」


そして、また一つ絶句するものがあった。
それは机に置かれた大量の人型である。


「……すっげぇ。これだけの人形をよくもまあ……しっかしマンホールの中とは盲点だったな」

「それより、結衣とぼーさん土汚れがあるけどどーしたの?」


そこであたしとぼーさんは顔を見合せ、先程起きたことを説明すると綾子が叫んだ。


「結衣、あんた怪我はないの!?」

「な、ないよ。ぼーさんが助けてくれたから」

「ホントに!?」


綾子はなんだかんだと世話焼きである。
口煩いし、面倒臭いけれど優しい人だなと自然と笑みが浮かんでしまった。

笑うあたしに綾子は怒っていたが、仕方ない。
そう思っていると、ナルに麻衣と揃って名前を呼ばれた。


「麻衣、結衣」


彼が手渡してきたのは、あたしと麻衣の名前が書かれた二つの人形であった。
ぼーさんの言う通り、あたしは呪詛で呪われていたらしい。
そして麻衣までもが。


「ぼくの人形と……吉野先生のものもあった」


何とも言えない気分である。
まさか自分が呪われていたなんて、初めての事だから。


「で?これで呪詛はパアになったわけか?」

「ああ。あとは水に流すか焼き捨てればいい」

「……そやけど、犯人がこれでやめるでしょうか」

「だな。肝心の犯人もわからねえし」

「いっとくけど、笠井さんじゃないからね!」

「犯人は笠井さんじゃないから!」


あたしと麻衣の言葉に、ぼーさんは困ったように『わーたって』と言う。
執拗いくらい言わなければ、直ぐに笠井さんが疑われそうである。
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