第1章 episode1
『野暮な質問。』
そう言うとヘラヘラした表情のまま私の指からするりとタバコを抜き取り、それを咥えて大きく深呼吸をするホークス。
「来んの?」
『…考えさせてください』
そう言って部屋に戻ろうとすると1本の赤い羽根が私の顔の目の前で静止する。
「ハハッいいねその目。ほんっとたまんない。」
スっと腕を引かれそのまま私はホークスの腕の中。
「なんですか」と聞き返せば、タバコを持った右手で私の髪を耳にかけて「大人になったを見たらイレイザーも欲情しちゃうかもね」なんて言う。
『からかわないでください。』
「からかってないよ?こんな綺麗な女、誰だってみたら欲情するでしょ。イレイザーに個性使ったらダメだよ?」
『そんな私用で個性なんか使いませんよ。帰ります。』
私はキッパリと言い放ち、部屋に入って荷物を取り更衣室で着替える。
『はぁー。』
大きなため息をひとつ着いてその場にしゃがみこむ。
" イレイザー "
久しぶりに聞くその名前だけで私の胸は大きな音で脈打ち、正常を保つことが難しい。
あれは雄英に通っていた頃の話。
緑谷先輩や麗日先輩の担任だったイレイザーヘッドこと相澤消太先生。
先輩方の卒業とともに私たちのクラスの担任となった相澤先生に…あのなんとも言えない独特な雰囲気、そこから垣間見える大人の色気と余裕に…子どもだった私は一丁前に憧れてその気持ちが恋心に変わった高校3年の卒業前。
他クラスの子が相澤先生が好きという風の噂を聞いていてもたってもいられなくなりたまたま2人きりになった教室で発した私の想い…
呆気なく振られ、そこから卒業式後、相澤先生には会ってない。
振られてしまった手前、顔なんか出せないしどんな顔をして合えばいいのかなんの話しをしたらいいのかも分からないし。
ため息を1つ2つと着きながら着替え、カーテンを開けるとそこには私服に着替えたホークスが待っていて
「送るよ。遅いし。」
『ガキじゃないんで。1人で帰れますよ。』
「変な虫がくっついてくるかもしれないでしょ?」
『私虫に刺されないんで。』
「…ったくお前はほんとに。」
わしゃわしゃと頭をかいて私が帰り支度をしているのを見つめるホークスに「今日は1人になりたいんで」なんていって部屋を後にした。