第1章 episode1
《 ミス キット!状況は? 》
塚内さんの無線を聞いてキャットフードを1粒口に放り込み、暗い敵のアジトの窓の外から中の様子を伺う。
〈 んー…人質は無事。標的との距離もある。突撃なら今よ 〉
その私の一言を皮切りに、私を含め複数のプロヒーロー達が敵のアジトに突入する。
「キット!」
ウィングヒーロー ホークスが私の名前を呼び勢いよく飛んでホークスの剛翼共に窓を割って潜入。
椅子に座って震えている少女を抱き「もう大丈夫よ」と声を掛けそのまま外へ出るとホークスが私たちをキャッチ。
「やっぱ俺ら結構良いバディじゃない?」
『はいはい、分かったから早くこの子を病院に』
「はいよ」
――――――
『はぁー疲れた。』
ゴーグルとマスクを取り、結んでいた長い黒髪を解く。
体が少し汗ばんでいて気持ち悪いからヒーロースーツの胸元を少し開けてテーブルに置いてあったミネラルウォーターを無造作にとって喉に通す。
「おつかれ。」
そう言って隣に座るホークスはビールを片手にごくごくと喉を鳴らす。
公安で働くホークスとどこの事務所にも所属せずフリーでヒーローをしている私はよく現場が被る。
チラッと横を見ると何を考えているか分からない綺麗な横顔にそのまま見とれてしまいそうになる。
「今かっこいいと思った?」とおちゃらけて言うホークスを横目に、私はバッグからポーチを取りだしてテラスに出る。
「大きい仕事のあとの一服はさぞ美味かやろうね。」
『まぁ…そうですね。』
ジッと音を立てて猫のチャームが付いたZIPPOでタバコに火をつけ、今日の疲れとため息と一緒に煙を吐く。
「そういえばさ、今度飲み会誘われたんだけども来る?」
『誰が来るんですか?』
「俺と常闇くんと爆豪くんと轟くんと緑谷くん。後エンデバーさん来るかも。」
『へー。エンデバー…珍し。てか男ばっかじゃないっすか』
ホークスはテラスの手すりに腰掛けてケラケラと笑う。
「あ、あとイレイザーも」
その名前に一瞬動揺をし、煙が変なところに入ってむせ返る。
「大丈夫ー?」なんてケラケラ笑っているがその目は全く笑ってなくて、
「まだ好きなの?」という言葉を私に投げかける。