第5章 嫉妬
先輩と市川くんとは別れて副隊長室に向かう。
まだ、終わらせたくない。
何も始まってすらないんだから...。
扉の前で声をかけると返事があったので中に入る。
私に視線を向けると、ちょっと待っとれと言って、また仕事と向き合う。
仕事が残っていると言っていたのは本当だったようだ。
扉の前で立ったまま彼を待った。
5分程そうしていると、私を見てええでと言う。
「失礼な態度をとってすみませんでした。」
「別にええで、君とは合わんことがわかったし。」
頭を下げたまま溢れそうになる涙を我慢する。
このまま名前のない関係を終わらせても、前のように戻ることはないだろう。
それがわかっているから終わらせたくはないが、彼の誇りを否定しまったのだ、無理だろう。
それならば...もう彼の答えがわかっているのならば......。
「......です...。」
「聞こえへん、はっきり言ぃや。」
「...好きです、宗四郎さんが好きです。あの日からあなただけを見てきました。」
彼は目を見開いて私を見る。
どうせあなたの答えはノーなのだ。
それがわかっているから、私は告白したのだ。