第5章 嫉妬
目を閉じて頭を抱えた彼は、泣きそうな声を出す。
「それは、あかんやろ...ずるいで......そんなん言われたら、僕がなんも出来へんのわかっとるやろ...。」
無理だと言えば済むことなのにどうして言えないんだろう。
顔を上げた彼を見て驚いた。
泣いていたのだ。
閉じられている目から雫が零れ落ちていく。
「なんも言えへんやん......僕も、と答えることも出来ひん、僕は違うと嘘もつけへん。......あないな態度とっといて、手放すことも出来ひん。」
なんで言うたんやと儚げに笑う。
すぐにでもその涙を拭いたいが、それは私に許されているのだろうか。
私が彼を泣かせてしまっている、そう思うと自分の目からも水が溢れてくる。
「この告白も、なかったことにしますか?私は構いませんよ、あなたがそれで楽になるなら......。」
「アホか、もう無理やろ......僕かて、なかったことに出来る程、君への気持ちがないわけやない。」
嬉しいと思ってくれているということだろうか。
やから...と続ける。
「僕がもっと強くなるの持っててくれ。どんな怪獣にも負けへんと思えるようなったら、君を僕のものにする。」
どこにも行かずに待ってますと答えると、宗四郎さんは笑いながら涙を拭った。
隊長と小此木さんのことは我慢してくれと言われた。
そのあとちゃんとケアするからと...。
これに関しては私が理解を示さなければどうしようもない。
だから、彼を信じることにした。