第5章 嫉妬
その後の訓練中も素っ気ない態度を取り続けてしまう。
勤務時間外になると、話しかけられそうになると逃げてしまった。
みんなでトレーニングルームで筋トレをしていると、突然彼がきて、名前を呼ばれてしまった。下の名前で...。
下の名前で呼んでいるということは、断れるのではないか?
動かずにその場に留まっていると、薄く目が開かれてその視線に捕えられる。
「ほんまなんやねん、君。はぁ...もうええ。」
あ...もしかして、嫌われる?
彼は呆れたように溜め息をし、戻っていってしまう。
今すぐ追いかけて縋り付きたい衝動に駆られるが、今の状態のまま彼の傍にいても、どこにも行かないでと困らせてしまうだろう。
泣きそうになるのを堪えて、筋トレを再開した。
日比野先輩にいいのかと問われたが、笑いながら肯定した。
笑っていないと涙が零れてしまいそう。
寮に戻るとキコルちゃんに心配された。
どうしたのかと聞かれたが、私がただ嫉妬を拗らせているだけなので、言わなくていいだろう。
と思ったが、しつこく聞かれるので、話してしまった。
「あんたさぁ、副隊長にめちゃくちゃ愛されてんのわからないの?」
キコルちゃんの口振りに、何か知っているのかと疑問に思った。
どうやら、屋上であの後、彼の気持ちを聞いたらしい。
内容は教えてくれなかったが、私は相当彼に愛されているのだと言う。
だが、私も知らないわけではない。
私を見る彼の目はとても優しくて、触れる手もすごく優しくて...彼がくれる言葉はいつも私を喜ばせる。
それでも今は少し、彼から離れたい。
これからもああいうことは増えるだろう。
突然呼ばれていなくなる。
仕方ないとわかっていても私は嫌なのだ。
だから少し...私が平気になるまで、私がもう少し大人になるまで......。
明日からはあんな風に嫌な態度をとるのはやめよう。
自然に、何もなかった前のように...。
今日はすみませんでした、と宗四郎さんにメッセージを送り眠りにつく。