第5章 嫉妬
みんながスーツを脱いでトレーニングルームに入ってくるのを、副隊長の横でボーッと眺めていた。
いつまでこうしてみんなと共に訓練に勤しむことが出来るのだろう。
そんなことを考えていると、みんな来たようだ。
眉を下げて溜め息を吐いた私に気付いたのか、副隊長は私の背中にポンと手を軽く当ててから、みんなに指示を出す。
「三浦はまだ完全には回復してへんやろし、身体鈍っとるようやから、僕が鍛え直したる。」
「ひぇっ...了!」
回復してないのわかってるのに鍛え直すんですか...。
みんながトレーニングを始めるが、私はまずは柔軟からということで、ストレッチを始める。
少し足や腕を解していると、座れと言われたので座った。
「なんで正座やねん。足伸ばせ。」
あ、前屈をするのか。
普通に正座をしたら、笑われてしまった。
足を伸ばすと背中に体重をかけられる。
「痛ないか?」
「足が攣りそうです...。」
「アホか、怪我のこと言っとんのや。」
今日の私はポンコツらしい。今日に限ったことではないが...。
大丈夫ですと答えると、余計体重をのせられる。
「んあっ…うぅんっ…!」
「変な声出すなや。」
苦しいのと痛いのとで、思ったのとは違う声を出してしまった。
まるで喘いでいるようになってしまった。
すみませんと謝りながら、声が出ないように我慢するが、たまにんっとかあっとか出てしまう。
恥ずかしい…。
みんなの視線が集まる。
それに気付いた副隊長に頭を叩かれた。
違うんです、真面目にやってるんです…。
「いっ!?あぁっ!!」
ギュウギュウと掌で背中を押す副隊長の手が、肩の近くに移ったタイミングで激痛が走った。
みんなの視線も痛い…。
「すまん。肩か?」
副隊長は痛みの原因を探るように、先程よりも力を弱めて肩を撫でる。
首の近くまでくると痛みが走った。
その痛みから逃げるように身体を捩らせる。
声は出したくなかった為、なんとか我慢した。
相当凝っとるなあと言いながら、痛めたそこを優しく撫でてから、その部分を避けるようにまた体重をかけられる。
どうやら肩が凝っている為、そこが痛むらしい。
ストレッチを入念にした後、いつもよりも軽いメニューをこなし、今日の勤務を終えた。