第16章 10号
許してくれてなかったらしい。
強化装甲演習室の床にうつ伏せになり荒く息をする。
苦しい…。
「はよ立ちぃ。少し休んだら、ノーマルスーツでやんねんぞ。」
「り、了…。」
確かにまだ時間が残っている。
もう体力なんて残っていないが、逆らえるわけもないので、グッと腕に力を入れて立ち上がる。
宗四郎さんが肩をかしてくれたので、そのまま保管室へ向かう。
今度は彼の手を煩わせない為に、なんとか自分で着替える。
ノーマルスーツに着替えて椅子に座って待っていると宗四郎さんが来て目の前にしゃがんで、もう少し休んでようと、私の膝に腕を置いて頭を乗せた。
「椅子座る?」
「んーん、僕はここの方がええ。」
休むなら座った方がいいだろうと聞いたのだが、膝に乗せたまま片目を開け上目遣いで見てきて、柔らかく笑う。
「ん〜〜すきぃいいっ!!」
「ふっ、声出てもうてるで。ほんま可愛ええて。」
昇天して心の中で叫んだ言葉は、そのまま声に乗って彼に届いてしまった。
椅子の両端に手をついてそのままゆっくり顔を上げてくる。
近付いてくる彼を見て目を瞑った。
優しく唇が触れ舐めると隙間に押し込もうとしてきたので僅かに開くと、すぐに捩じ込んできて私の舌に触れる。
ゆっくり柔らかく絡ませるとすぐに唇が離れ目を開くと、少し熱が篭った瞳とぶつかる。
チュッと軽く口付けてまた膝に伏せた。
柔らかく微笑む彼の頭を撫でると、汗で少し湿っている。
「汗かいとるから触らん方がええで?」
「私もかいてるよ。」
「美影の汗は舐めれるから……あっ、ちょ…ははっ、なんやの?」
舐めれるとはどういうことだ。
絶対に舐めないでもらいたい。
両手で前髪の下から指を忍び込ませ、そのまま後ろに持っていく。
オールバック保科。
まだ汗が滲んでいて、暑いのか頬もほんのり赤く染まっている。
「目、開けて?」
「やから、開けとる言うとるやろ…。」
そう言いながらも、ゆっくりと赤紫の瞳が露わになっていく。
その瞳で私を見上げてくる。