第16章 10号
「え、めっちゃ甘えたやで?すーぐ甘えてきよる。抱きついて顔擦り寄せてきたり、昨日なんて僕の背中に飛びついてきよって、そんまんま部屋まで背負っとったわ。」
手で顔を覆った。
何故、言ってしまうのだ…。
それに昨日は、宗四郎さんが降ろしてくれなかったからじゃないか。
顔を隠す私にどしたん?と問いかけてくる。
あなたのせいだというのに…。
思わずバカと呟いてしまった。
空気が固まる。
新人が副隊長にバカと言っているのだ、傍から見れば相当やばい状況だろう。
「訓練、どしたろかなあ?午前よりもハードにしよか!」
ひぃっ!?
あれよりもハードになったら死んでしまう。
すぐに謝ったが、笑って濁された。
「ふくたいちょー…。」
「はい、今副隊長言うたから、知らーん。」
みんなの前だったので、恥ずかしくて副隊長と呼んでしまった。
「宗四郎さん…お願い、許して…あれよりきついのは死んじゃう…。」
「嫌や。」
顔を上げて彼を見ながらいうと、ニッコリと笑って拒否られた。
せっかく名前で呼んだのに…。
行こかと言って私を立ち上がらせて、みんなにも早く食べて訓練するよう言って食堂を後にする。
背中から手を回して腰を捕まえられて引き寄せられるたので、恥ずかしくて手を離そうとしたがビクともしない。
「男、おったなあ?」
耳元に口を近付けられて囁かれたので、擽ったくて肩を上げて避けた。
確かに男の人も数人いたが、ほとんど女性隊員だったじゃないか…。
「男はあかん。僕のこと話しとったやろ?あないな可愛ええ顔して…許さへん。」
何を許さないのですか。
別に普通だったと思うんだけど…。
男の人と話していたのは事実なので素直に謝ると、僕以上に強くてかっこええ奴はおらんからええ、と自信満々に言う。
どっちなんだ、許さないのか許すのか…。