第13章 指輪
あの後、必死で頼み込んで、数日だけ鳴海隊長に訓練に付き合ってもらうことができ、ほんの少しは強くなれたんじゃないかと思う。
今は飛行機に乗って、私の肩で眠る愛しいを眺めている最中だ。
まあ、頭頂部しか見えないが。
「ん〜おっぱい好きや。」
「は?」
いきなり何を言い出すのかと思い反応してしまった。
寝言だったらしい。
どんな夢を見ているのか……というか、寝言とか言うんだ…可愛い。
宗四郎さんの奥の窓を眺めたが、自分の顔しか見えなかった。
星を見れるかと期待したのに…。
勤務を終えてすぐに出発したので、今は夜なのだ。
夜遅くに彼の実家に伺うのは気が引けるので、今日はこのままホテルに泊まる。
機内モードに設定してあるスマホを開き、2人で撮った写真を眺めた。
本当にこの真っ赤な宗四郎さん好き。
「まーたそれ見て。あんま見んといてや。」
「あれ、起きてたの?」
どうやら、私がスマホを開く前から目が覚めていたようだ。
私のスマホを勝手にスライドして、保存されている画像を見られていく。
保科宗四郎と検索して保存した画像なども出てきて焦ったが、何も言って来ないので、胸を撫で下ろした。
他にはキコルちゃんたちと撮ったものや、同期たちと撮った写真がある。
スライドをしていた指がとある写真で止まる。
「これなんや?」
「んー?えっと…これ、鳴海隊長と撮ったやつかな。お母さんが私のスマホに送ってくれて…。」
10年前の写真だ。
鳴海隊長に抱えられた私がカメラに向かって笑顔でピースをしている。
「あっ!?ちょっと!!」
「っるさい、あんま大きい声出したらあかん。」
はっとして口を押さえる。
宗四郎さんが何も言わずに削除ボタンを押したのだ。
声を出してしまうのも仕方ないだろう。
まあ、削除ボタンと言っても、ゴミ箱に移動しただけだが。
「僕との写真2枚しかないな。もっと撮ろな?」
うんと言って、彼の頭に頬を乗せた。
そういえば亜白隊長から送られてきたものがあったなと思い、後で保存しようと考えた。