第1章 私の恋 夏油傑 (出会い編)
「おい、傑!交換しろ!」
「やだね。これはさんから貰ったやつだ。」
ベリっと包装紙を破りながら、夏油先輩は私の横にどかっと座った。
「よこせっ!ダブルクリーム!」
「おい、よせっ。」
「わっぷ!」
避けようとした夏油先輩のヒジが見事に、エクレアを持っていた私の手にあたり、クリームが私の顔面の真ん中にべっちょりとついてしまった。
「あ。」
「あ。」
私は震えた。
真ん中まで食べて、美味しいカスタードと生クリームと外のチョコのパリッと感を楽しみにしていたのに。
「白髪男っ!てんめ!買ってきてやったんだから、黙って食べなさいよっ!!」
クリームが頬や鼻からぬっちょりと垂らしながら、私は敬語も忘れて怒鳴りつけた。
「白髪男!?オマエな!!」
「だって、私夏油先輩が呼ぶ下の名前しかしらねぇもん!このエクレア白髪男が食べろ!」
「きったな!!やめっ!!うぶわっ!」
私は自分の顔に突っ込んだ潰れたエクレアを、白髪男の口に押し込んだ。
「んもーエクレアなんかでやめなよー。灰原ドン引きしてるよー。」
手が汚れるのが嫌なのか、箸でカラムーチョを食べてる硝子先輩が言った。
「しぇんぱいをうらみゃぇ!ほがっ!」
半分以上のエクレアを押し込まれた白髪男はもう何言ってるのかわからない。
「ほら、2人とも落ち着いて。さんも。」
そう言って、夏油先輩はエクレアを私の口に当ててきた。
「…っ!」
「私の半分あげるから。」
「…はい。」
唇に当てられたエクレアを私は素直に口を開け、一口齧った。
「そこで顔洗っておいで。私が当たったから。ごめんね。」
私は首を振って白髪男を指差した。
あいつが暴れたせいだと言いたかった。
「傑、俺は?」
「ないよ。口の周り拭きな。」