第1章 私の恋 夏油傑 (出会い編)
急に夏油先輩が右から左側に立った。
「…?」
ふと見上げると、後ろから自転車が走り去った。
まさか、そのために場所を変わってくれたのだろうか。
「ありがとうございます…」
「カーディガン、暗い色だから見にくいからね。」
そういう夏油先輩も黒いジャケットを羽織っている。
小さいことだけど、私にとっては大きな優しさに私は胸が熱くなった。
ーー…優しい人。
私は長い夏油先輩のカーディガンをきゅっと握った。
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「ただいまでーす。」
コンビニの袋を持って部屋に帰ってきたら、3人で大富豪をしてるようだった。
「おっせーよ。てか傑。やっぱり行ってたんだな。言えよ。」
「こんな時間に女の子1人で行かせるわけにはいかないだろ。」
「返り討ちだろ。」
確かに、その辺の男に負ける気はないけれど。
「五条も上着もって立ち上がってたじゃん。夏油居ないの気づいて座ったけど。」
硝子先輩の言葉に白髪男は持っていたカードをぽいっと投げた。
「寒かっただけだよ!」
「それは悪いことをしたね、悟。先を越してしまった。」
「ばっ!そんなんじゃねぇーって!」
2人とも罰ゲームって言いながらも心配してくれたことが嬉しかった。
「はい、先輩。カラムーチョ。」
「ビールによく合うのよねー。ありがとう。」
私は買ってきたものをそれぞれ手渡ししていった。
「夏油先輩、甘いの苦手ですか?」
「いや、そんなことはないよ。」
「じゃあ、それ一緒に食べましょ。同じやつ。」
私はエクレアを渡した。
「沢山買うなって思ったら私の分?ありがとう。」
「あっ!オマエ、ダブルクリームじゃん!」
「はい。そうですよ?」
「は!?俺のカスタードだけじゃねぇか!なんで傑とオマエのは、カスタードと生クリーム入ってんだよ!」
「んうっま。」
さっきの唐揚げの恨みと言わんばかりに私は目の前でエクレアを食べてやった。