第1章 私の恋 夏油傑 (出会い編)
私の口元を指差し、夏油先輩はまた笑った。
「…気をつけます。」
私は顔に力を入れて、自分の頬に触れた。
こんなにも自分が顔に出ていたなんて、ここにくるまで知らなかった。
子供っぽいから気をつけないと。
「それで、最近はどう?」
しばらく歩いていると夏油先輩が口を開いた。
「術式の勉強、進んでる?」
「はい。楽しくて仕方ないです。」
「それはよかった。」
「でも、やっぱり呪霊を取り出すときに色々考えちゃって。」
「うん。」
「今200体くらいの呪霊と契約を結んでるんですけど、いつも同じ呪霊ばかり呼んじゃうんです。」
「そうか。敵によっては合う合わないあるから、一番いい呪霊を出したいね。」
「先輩どうしてますか?」
「私の場合は、敵を見極めたら頭で想像してる。想像した通りの呪霊が自動で出てくるよ。もちろん。呪霊を覚えて“これ”と思った呪霊その一体を出すこともできる。例えば、打撃に弱そうな敵がいたとしたら、身体が硬い呪霊を思い浮かべたらそれが出てくるっていうようにしている。飛んでる敵なら、こちらも飛べる呪霊を想像してね。それなら持ってる呪霊の名前や顔を覚えてなくても自動的に出てくるんだ。」
「…すごーい。」
「一体一体全てを把握はしているけど、取り込んだ数が多すぎるから咄嗟に出すのにタイムロスが生じる。それは避けたい。」
「じゃあ、私にもできるようになりますかね!?」
「きっとね。」
出来るようになりたいーー…
どんな術式を組めば出来るようになるんだろうかと、自分の手のひらを見つめた。
指先には小さな傷跡が無数にある。
これは呪霊に契約を結ばせるときに私の血を飲ませないといけないから、自分で針を刺した跡だ。