第1章 私の恋 夏油傑 (出会い編)
「わっかりやす。今度ババ抜きする時、オマエ俺の隣な。」
くくっと笑う、白髪男は私に千円札を渡してきた。
「俺エクレアとコーヒーゼリーな。」
「…はい。」
「僕はシュークリームお願いします。はい、お金!」
「…ゆうはシュークリームね、わかった。」
「私カラムーチョ。私部屋に財布あるから、その千円で買ってきてー。」
「硝子先輩は辛いもの。」
「私はいいよ。」
遠慮なのか、夏油先輩は首を振った。
「いってきまーす。」
罰ゲームだなんで、これこそ私の理想の高校生ライフではあるけれど、実際自分が罰ゲームを受けるなんて。
「エクレアコーヒーゼリーシュークリームカラムーチョ」
呪文みたいに呟きながら私はグラウンド横を通り抜けようとしていると、後ろから声をかけられた。
「さん。」
「夏油先輩?どうしました?あ、何か買います?」
「ううん。一緒に行こう。」
ーーーえ。
私の横に立って、夏油先輩が笑った。
「あとこれ。夜は冷えるから。」
軽いニットカーディガンを私に手渡した。
「さん、七海にかけただろ?さすがに春でも夜寒いよ。」
「…あり…がとうございます。」
私は渡されたカーディガンに袖を通した。
「僕のだから大きいね。」
「…っ。夏油先輩のですか?」
「ごめんね。」
袖が有り余っているから、くるくると回した。
「暖かいです。ありがとうございます。」
私が横を見上げ笑うと、夏油先輩も微笑んでくれた。
2人並んでコンビニ向かう。
夜9時すぎ。敷地内は静かだし、もともと民家も多くないためコンビニまでの道もあまり人はいない。
「なんで夏油先輩も…?もしかして行ってこいって言われたんですか?」
「いいや。最後まで負けてたのは僕もだしね。最後カード引いた時もっと駆け引きして楽しむべきだったかなって思ったんだ。」
暗に私が弱すぎるって言われてるようで,私はむっと口を出した。
「それ。また顔に出てる。」