第5章 二人でアオハル
「人には呪力がある。それを見てるよ。」
「呪力だけ見えるので、歩けるの?物にぶつからないの?」
私の次々出てくる疑問に、悟さんは肩を震わせた。
「あ、ごめん。バカっぽい質問だった?」
「いや?新鮮だった。」
悟さんはポケットから手を出して、私の右手に指を絡ませて歩いた。
手を繋いだのは初めてで、私はびっくりした。
きっと鼓動は高くなって悟さんに伝わっているだろう。
「人からでた呪力は残るからね。残穢として。物にもそれは残る。とても小さくても少なくても僕の目にはみえる。」
「ふーーん。私のはそれで白いって言ってたの?」
「そうだね。だれの呪力かもわかるよ。のはピンと糸を張ったように綺麗な呪力だ。少ないけどね。」
「すごいね、悟さん。」
「だろ?」
にかっと笑う悟さんの髪の毛に街灯の光が反射して、とても輝いて見えた。
ヒソヒソと周りから聞こえてくる声。
これだけ背が高くて見目がよければ、目立つよね…。
「といると、静かだ。」
ふと、悟さんが言った。
たった今、周りからヒソヒソ言われるなーって思ったのに、悟さんからしたら静かな方なのかもしれない。
「女避けになってる?」
「違う違う。そうじゃない。呪霊たちがまったく近くにいないんだ。」
「そうなの?」
「あぁ。今まではは五条家の屋敷と高専の結界内にいたから、元々呪霊が近くにいなくて気付かなかったけど、ここまで綺麗に避けられるのは初めてだな。」
「でも、“最強の五条さん”にも近寄らないんじゃない?」
「近寄らないよ?遠巻きにじーーっと見てくるけど。」
「はは。」
見られるのはなんか嫌だね。って言うと、悟さんは顔をしかめた。
「でも今は視線すら感じない。静かもんだ。」
「よかった。なら、のんびり歩けるね。」
私が悟さんの絡められた手をぎゅっと強く握り返すと、笑って頬にキスをしてくれた。