第5章 二人でアオハル
「あー、楽しかった。」
私はベッドに大の字でうつ伏せになっている悟さんの横に腰掛けた。
「こんな風にゲームしたの初めて。」
「……は楽しかったでしょーよ。」
ぼそっと呟く悟さんに私は吹き出した。
「楽しくなかったの?勝てなきゃ楽しくないなんて、ほーんと28歳児って言われるだけあるね。」
「…誰に聞いたの。恵か。」
「ふふっ。」
生徒に慕われてる悟さんが好き。
ゲームで拗ねる悟さんが好き。
むすっとしてる悟さんの髪の毛をふわふわと撫でた。
「何命令しよっかなー。」
「ムカつく。」
「ここぞという時に使いたいから、今はいいや。ね、夜の京都歩かない?」
「……それ命令?」
「そんなことに使わないよ、もったいない。」
せっかくゲームで勝ち得た権利をそんなことには使わない。
「ま、いいよ。行こうか。」
「それとも、生徒の見回りある?」
「しないよ、そんなこと。アイツらも好きに夜遊んでるだろ。」
むくっと起き上がって、悟さんは丸いサングラスをつけた。
「夜は冷えるから、上着着なよ。」
「はーい。」
厚手のカーディガンを羽織り、私は悟さんの後ろについていった。
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夜9時過ぎていても人は多くて、オレンジ色の街灯がキラキラとしていた。
石畳の道を歩き、ところどころある寺社仏閣は夜の雰囲気を醸し出していて、不気味なようだけど、それでもやはり美しかった。
私はポケットに手を突っ込んで歩く悟さんの左腕に捕まり、散策を楽しんでいた。
「この辺も詳しいの?」
「んー、道はわかるけど、観光はわかんないよ。」
京都出身とは言っていたけれど、観光は確かにしないかもしれない。
「サングラスしてても見えるの?」
いつも気になっていたけど、初めて口にした疑問。
やっぱりあの青い眼は特殊なのだろう。
「普通の人が見える視界は今遮断してるよ。」
「え?」
「色々見えすぎちゃうからね。情報多すぎて疲れるから見える物減らしてるの。」
「その青い眼?」
「そ、六眼っていうの。五条家でたまに産まれるんだ。」
「ふーん、視界遮断して,今は何が見えるの?」