第5章 二人でアオハル
「んでもさ、今はせっかくの京都だし、悠仁に話すのも帰ってからにしよう。」
先生の気遣いがわかって、私は頷いた。
「そんなことよりもっと大事なことあるしさ。」
「ん?」
悟さんがガバッと起き上がった。
「桃鉄。あと5年残ってるっしょ。」
「まだやるのか。」
「傑逃げるなよ?まだ8時だ。」
はいはい。と、笑いながら傑さんは冷蔵庫からビールを取り出した。
私はもう3回ゴールしてるから、後2回、目的地に着くと私の勝ちだ。
ちなみに悟さんはまだ一回だけ。
それなのに、強気に“逃げるなよ”なんて言うから、私は笑ってしまった。
「あ、悟さんも飲む?」
「僕下戸だから。」
ジュースしか飲めなーいと、コントローラーを握りしめた。
■□■□■□
「…圧倒的。」
ふっふっふっ。
と震え、笑う悟さん。
「10年あっという間だったねー。楽しかった!」
私が言う横で、燃え尽きた悟さん。
「…圧倒的、敗北。この僕が。しかも最下位…傑にも負けた。」
「悟、仕方ないさ。キングボンビー最後来ちゃったし。」
ぽんっと傑さんに肩を叩かれた悟さんはふるふると震えていた。
「に…負けた。」
「目的地、合計…何回着いたっけ。最初に5回着いたのも私だったね!勝負は私の勝ちっ!ありがとう。さ、と、る、さんっ。」
指先でつーんっと頬をつついてやった。
「なんだ、二人で何か勝負してたのか。」
「私が何でも命令出来るんだー。」
「へぇ。悟を言うこと聞かせるなんて滅多にできないから、貴重だな。」
「……くっそーー!」
大の字でベッドに飛び込んで、悔しがる悟さん。
「なーにが、やったことないから教えてね。だよ!マスの場所も、土地勘も、どこの物件が買い占めると得するかとか、ぜーんぶ覚えてるとか卑怯だろ!ばーかばーかばーか!!のばーか!!無し無し無し!!このしょーぶ無し!!!」
「子供か。」
傑さんはビールを飲み干し、立ち上がった。
「部屋戻る?」
「あぁ。こうなった悟はめんどくさいからね。逃げるに越したことはない。楽しかったよ。」
それじゃ、悟をたのんだ。と、私の肩をぽんと叩くと、傑さんは部屋から出ていった。