第5章 二人でアオハル
それは生徒たちが私の部屋を訪れるさらに1時間前のことだった。
「本当に悟さんも同じ部屋なの?」
「まぁ、がくるって決まったのが一昨日だったしさ、シングルがもう一部屋確保できなかった。ってのもあるかな。ツイン二つ頼んでもよかったんだけど、せっかくなら一緒がいいじゃん?」
「…生徒さんたちにバレちゃうよ?」
「ダメなの?」
普通先生ってそんなプライベートなこと生徒に見せたり話したりしないでしょ。
私は部屋の荷物置きに自分の荷物を置くと、ため息をついた。
「なんか…恥ずかしいじゃん。」
「いつも一緒じゃん。」
「寝る時は別じゃん。」
「セックスの時は一緒に寝てるじゃん。」
「…っ。今日はしないじゃん!」
「え?しないの?」
「研修中でしょっ!」
変なやり取りをしてると、悟さんはゆっくりと私に近づいてきた。
そっと指が私の髪の毛に触れてきた。
「…っ。」
私は悟さんから目を逸らした。
「キスは?」
「研修中は…ダメです。」
「嘘。心臓はそんなこと言ってない。」
「私は常にドキドキしてるからあてになりません。」
指先が耳から頬を撫でていく。
「…っ。」
くすぐったくて身を捩ると、少し満足そうに私に体重をかけてきたか。
「わっ…!ちょっ…だめ」
そのままベッドに押し倒されて、悟さんは目隠しを外しその目で私を見つめた。
「早くなった。」
鼓動のことだろう。
わかってる。私は悟さんの目に弱いーー…。
つい先ほどの特級とやらの呪霊との戦いを思い出した。
空に浮き、呪いを軽くあしらうように祓う悟さんを。
「また心臓早くなった。何考えてた?」
私は上に覆い被さる悟さんの髪の毛に手を伸ばした。
「さっきの…戦ってる時の悟さん。」
「ほらね。僕最強でしょ?」
「うん。すっごく強くてカッコよかった。」
そっと降りて来た悟さんの唇を私は受け入れた。
「ん…。」