第5章 互いが住む世界
千明side
デート当日。
佐野が車を出してくれた。
俺は助手席に座り、運転する佐野を横で眺めながら胸が高まっていた。
運転する姿が物凄くかっこいい。
大人ってこんなにかっこいいんだ。
憧れる。
「どうかしたか?」
「なんでもない//」
思わず目線を窓の外に移した。
今日はどこに行くんだろうか。
何も教えられてない。
お金もある程度は持ってきたけど、足りるのだろうか。
途中で佐野が車を降り、飲み物を買ってきてくれた。
お金を返そうとするといらないと断わられてしまった。
「あのさ、どこに行くの?」
「涼しいところ。」
中々教えてくれないが、海の方に向かっているのがわかった。
しばらくすると海が見えてきてあまりの綺麗さに写真を撮る。
こうやって誰かと遠出したのは初めてだ。
幼い頃は厳しく作法や言葉遣いを教えられて遊びになんて連れて行って貰えなかった。
遊んだとしても家の中やどこかの高級ホテルで音楽鑑賞や演劇鑑賞。
子供だった俺には退屈すぎる場所ばっかりだった。
先輩と付き合ってた時も初めはデートしてくれてたが途中から家から出なくなったり、ご飯を食べに行くだけになっていた。
だからか海を見るだけでも凄く楽しく感じた。
「降りてみるか?」
「いいのか?」
「折角だ、足だけでも海に入ってみるか。」
「っ!入りたいっ!」
近くの駐車場に車を停め、2人で海に向かった。
外は暑かったが、初めて感じる潮風に感動してしまった。
足の裏で感じる砂の感触、静かに流れる波音、太陽が反射して光る水面。
初めて感じる全てのものに感動した。
「うわっ!冷たっ!」
足に触れた海水は思った以上に冷たく驚いた。
それでも凄く楽しく佐野を他所に楽しんでしまっていた。
「なぁ!佐野!見ろよこれ!貝殻見つけた!」
佐野に向かって貝殻を掲げると写真を撮られていた。
驚いて固まってしまう。
「な、何撮ってっ!//」
「綺麗に撮れた。」
そう言って見せてくれた写真は子供のように楽しそうにはしゃぐ俺の姿だった。
佐野の前でこんな顔してるのか俺。
そんな事を思うと一気に恥ずかしくなって顔が熱く感じた。
ただでさえ暑いのに熱中症になりそうだ。