第29章 川品中央総合病院
椛「少し時間、押してしまいましたね。」
シートベルトに手をかけて、安室に話しかける彼女。
安室「まぁ、そうですけど…
診察自体が予定より早く終わったので、許容の範囲内でしょう。」
そう言ってシートベルトに手をかけようとした時、何かを思い出した様に手を止める。
安室「あっ。」
椛「??
どうかしましたか安室さん?」
安室「そういえば先程、話の途中でしたが…」
椛「…何でしたっけ?」
安室「『どうしたら機嫌が直るか…』
の後です。」
彼の言葉に、
『あぁ、そんな事言ってたな〜』
と既に忘れかけていた椛。
そう言われてみれば、彼は何かを言いかけていた…
首を傾けて彼の方を見る。
どうやら安室からの続きの言葉を待っている様だ。
安室「あの時僕は、
『じゃあ、車に戻ったら椛さんの方からキスして欲しい』
と言うつもりでした♪」
椛(えっ??)
まさかの言葉に、驚いて少し思わず身を引くが、当の彼の方はニコニコと微笑みを称えていた。
椛「もう、随分前の事だし…
それに機嫌は直ってるでしょ?」
安室「随分前って…
ついさっきのことでしょう。」
椛「刃物男が出てきて、もうナイフと一緒に飛んじゃったでしょう?」
安室「ナイフと一緒に飛んでないです。
現に今こうして思い出してます。」
椛「ここ、病院の駐車場だよ?」
安室「地下だし、ほぼ人通りはないですよ。
ほら、現に僕たち以外誰もいない。」