第29章 川品中央総合病院
椛(そんな事言ったって…
私だって、好きで事件に巻き込まれているわけでは無いし…
それにそれを言うなら、私よりこの人が
『事件を呼ぶ男』なんですけど…)
椛は隣に立つ彼を見上げた。
すると、彼女から何か言いたげな視線を感じたのか…
安室「なんだい?」
軽く首を傾けて、彼女に視線を合わせる安室の姿。
椛「ううん、何でもない。」
事情聴取を受けていると何やら周囲から視線を感じ、椛は周りに目を向けると、看護師たちの黄色い視線を確認した。
どうやら、看護師達は椛の隣に立っている彼を見ている様だ。
彼女達の話し声に耳を澄ませると…
『さっきはあのお兄さん凄くカッコ良かった』だの
『アクションスターみたいだった』だのと称賛の言葉を並べていた。
彼女達の言葉を聞いて、再び隣に立つ彼を見上げる。
目暮からの事情聴取の受け答えをしている彼の姿が、目に映る。
椛(さっきの刃物男と対峙してる姿も、もちろんカッコ良かったけど…
もう通常モードで、普通に喋ってる姿でさえ私には物凄くカッコ良く見えるんだけど…
私は変態…?
変態なのか…??)
彼女の心の問いに未だ答えは出ない。
事情聴取が終わり、解放されると病院を出て、専用駐車場に向かう。
車に乗り込むと、何だかホッとしてしまう。