第31章 【贖罪の旅】
「――さあ、勝負は仕切り直しだ!ヴォルデモート!!」
「くっ!たかが『器』の癖に逆らうとは生意気な!!」
「ハリー!!聞こえてるかハリー!?」
その声を耳にし、ハリーはハッと正気を取り戻した。
詳しい事は分からないが、クリスの口ぶりからすると、恐らくクリスの魂がヴォルデモートの魂の『核』の部分を取り込んだことで、半分ではあるが身体が自由になったのだろう。
1つの体に2つの魂が混在するなんて初めて聞くが、そうすればこの状況は説明がつく。
クリスは奇妙にも両手で攻防戦を繰り広げていた。もしこの場でヴォルデモートが勝てば、世界は闇に包まれるだろう。
「ハリー、今だ!私ごとヴォルデモートを殺せ!もう分霊箱は無い、今がチャンスだ!!」
「無理だ!!君を殺すなんて僕には出来ないよ!!」
「出来る出来ないじゃない、やるんだ!世界の平和は君の手にかかってるんだぞ!!」
問答を続けている間も、ヴォルデモートはどうにかクリスの腕を振り切ろうと満身の力を込めていた。クリスもクリスで、どうにかその手を離さんと懸命に片方の腕をつかんでいる。
もし振り切られたらそれで最期だ。それでもハリーには、ヴォルデモートと共にクリスを殺すなんて手段を選ぶことは出来なかった。
そうこうしている内に、ついにヴォルデモートがクリスの腕を振り切って、杖を高々と上げた。それと同時に、ハリーも渾身の力を込めて杖を振り上げた。
その刹那、ハリーはまるで走馬灯の様に両親の姿を思い出した。
――父さん、母さん、どうか奇跡を……!!
「死ね、ハリー・ポッター!アバダケダブラ!!」
「僕らを守ってくれ――プロテゴ!!」
両者の放った閃光は真っ向からぶつかり合うと、合体して、巨大な光の柱となって天高く空を突き抜けていった。それと同時に、ハリーとヴォルデモートを包んでいた黒い境界も、天を穿つ光と共に消え去った。
『天からの祝福ですよ、ポッターさん。貴方に天使が微笑みかけているんです』
全ての力を使い切ったハリーは、意識を失う直前、オリバンダーさんの作業場で見た美しい羽根が舞い降りる光景を思い出した。
そしてどうかクリスが無事でありますように、とハリーは心の中で強く、強く願った――。