第28章 【美しき獣】
「何故だ……?今、今ハリー・ポッターの姿が見えたぞ?」
「我が君、我が君……私の顔に傷が、美しい顔に傷が……」
「ええい五月蠅い!俺様の大切なナギニすら守れなかった役立たずが!それよりもポッターだ!!あやつを殺さねば!!」
ヴォルデモートの怒りに反応し、制御を失った精霊達によってホグワーツ全域に天変地異がもたらされた。
禁じられた森には灼熱の炎が燃え広がり、赤々と空を照らした。
それだけならまだしも、次から次へと大地が大きく揺れ動き、空からは大雨を伴った嵐が襲い、戦う者たちの視界を遮らせた。
「我が君……我が君、どうか私の話を――」
ベラトリックスがヴォルデモートの足元に縋り付くと、ヴォルデモートはその顔を文字通り一蹴した。
「貴様の顔などどうでもいい!!とにかくポッターだ!ハリー・ポッターを探し出さねば!!」
そう言うと、怒り心頭のヴォルデモートは、ホグワーツ城へと向かっていった。足蹴にされたベラトリックスは、未だ血が滴る顔に手をやり、目をそらしていた現実を思い起こした。
――嗚呼、そうだ。あのお方の心を占めているのは、いつだってハリー・ポッターだけだった。大勢のマグルを殺し、その褒美として一度だけお情けを頂いた夜も、その結果生まれた御子さえも、我が君の興味には至らなかった。
何故?何故?何故私を愛してくれないのか?何故私との間にできた子供を、一目さえ見に来てはくれないのか?クリス・グレインと同じ御子なのにも関わらず。何故私の子供は『闇の姫君』と呼んで頂けないのか……?
もしや、私が美しくないからなのか。私がもっともっと美しくなれば、あのお方は私を愛して下さるのか?もっと美しく、もっと美しく……。
その時、ふいに実家に飾られた屋敷しもべ妖精の生首を思い出した。嗚呼そうだ、美しくないものは生きる価値がない。
「そうだわ……もう、こんな顔じゃ……愛してもらえない」
そう、闇の魔法で負った傷は二度と元には戻らない。
ベラトリックスは未だ血の滴る顔を両手で覆いながら、自らディメンター達がはびこっている場所に、ふらふらと足を運んで行った。
その後、彼女の姿を見たものは誰もいなかった――。