第3章 受胎
静かに聞いていたのに。
私が感情を爆発させて一気にしゃべり終えると、口を開いた。
「だったら、やめればよかったのに」
「……え?」
「誰かのために演じること、やめればよかったのに。そうすれば今頃そうやって悩んで傷つくことも無かったんじゃない?」
正論だった。
私はみんなが望む私を演じた。
そうすることが正しいと思っていた。
間違っているなんて一切思わなかった。
間違っていると気づいた時には、既に演じることを辞められない域まで達していた。
自業自得という言葉がよく似合いの馬鹿なピエロ。
「ま、そういう素直なところがのいいところだけどね」
「どこが素直だよ。素直のすの字もねえわ」
「うんうん。そういう生意気なところものいいところ」
「眼科行って来いよ。どんな目ん玉してんだ」
今の私の姿をみてそう言えるのは五条悟だけだろう。
「ねえ」
「なんだよ」
「は僕だけにムカついていればいいよ。僕だけに殺意を向ければいい」
「さっきも同じこと言ってたけどさ。なんでそんなこと言うんだ。こんな事聞く私も私だけど」
「ん~、なんでだろう。僕もわかんないや。ただ、ちょっと楽しいんだよね」
くすくす笑う五条悟。
命狙われるのが楽しいだと。
こいつドМかよ。
あんな行為したから完璧ド畜生ド鬼畜ドSの三拍子かと思っていたけど、違ったのか。