第3章 受胎
いつまでも話そうとしない五条悟に私は心の中で舌打ちをした。
「話って何?」
「うん、ぶっちゃけないんだけど」
「立てや。殺すから」
「あはは、よかった。いつもだ」
ケラケラ笑う男に殺意が芽生える。
お兄ちゃん、やっぱり私この男を殺すまで死ねないかも。
人をおちょくるために生まれてきましたと言わんばかりのこの男がムカついてしょうがない。
「そうやって、僕だけにムカついておきなよ」
「は?」
「僕にだけ殺意を向ければいい。いろんな人にムカついてたら疲れるでしょ」
まるで諭すかのような口ぶりに。
私は抱いていたクッションを強く抱きしめた。
「……ムカつきたくてムカついてるわけじゃない。お前らが好き勝手に言うからだろ。お兄ちゃんの血縁者ってだけで勝手に値踏みして勝手に私をそういう人間だって決めつけてんのが悪いんだろうが。私は私だ。夏油傑の妹だけど、妹である前に、私だってちゃんとした人間なんだ。心だってちゃんとある。ちゃんと傷つく。悔しくて泣くときだってある。嬉しくて笑う時だってある。でも、そんなの一切許さないって、のうのうと生きてることが罪だって、言うから。人前ではできるだけ泣かないようにしたし笑わないようにもした。売られた喧嘩は全部買った。お前らがそうやって望んだから、そう言う人間になれば満足なんだろって思った。お前らの望んだ結果がこれだよ。そしたら今度は、素直になれだのなんだのって。は?って感じ。なに、私はお前らの操り人形かよ。道化師かよ。玩具かよ。楽しかったかよ」
一気に溢れた。
今までためていた感情が爆発した。
五条悟は静かにそれを聞いていた。