第3章 受胎
一人になった部屋で私は再び大きなため息を吐いた。
それにしても。
夏油もそうだが五条も大概だな。
脳内に浮かぶ人物たちに、呆れるほどの思いが募る。
タバコを吸いたい衝動に駆られるが、そっと我慢しデスクに置いてあるガムを一つ手に取る口の中に入れた。
ガムを噛みながら、私は心の中で脳内の登場人物たちに語り掛ける。
似た者兄妹なんてオマエは言ったけど、オマエらも似た者同士だよ。
兄を殺された恨みから五条を殺そうとする夏油と。
親友から託された名前のない約束を守ろうとする五条と。
お互い、一人の人間に囚われすぎているだろ。
そのことに気づいていないうえに無意識でそうしてるんだから。
夏油傑の呪いに律儀に縛られ続けている。
解呪する方法があればいいけれど、たぶんないだろう。
乙骨とは違うからな。
一体何人の人間を呪えば気が済むんだ、夏油傑。
オマエの妹も親友も、オマエのためにお互いを呪ってお互いを縛ってんだぞ。
しかも無意識に。
私はオマエなんかに呪われたくないから、これ以上は何も言わないよ。
「馬鹿だな、本当……」
アイツらを形容する言葉は誰にも届きはしない。
「タバコが吸いたい」
本音と共に口の中にあるガムを吐き出した。