第3章 受胎
――家入硝子side――
夏油がいなくなった医務室には私と五条の二人だけが残される。
怪我を負った経緯は五条から聞いたけど……。
「生きづらい性格してるな、あいつは」
「やっぱりそう思う?」
あは、と笑いながら五条は余っている椅子に腰かけ長い脚を組んだ。
「似た者兄妹なんだよね~」
「笑い事じゃないだろ。居場所がなくなればあいつは夏油と同じ道に行くんじゃないのか」
「大丈夫。そんなことさせないよ。二度とあんな思い、したくないからね」
珍しく真面目な五条に、内心驚いた。
が、こいつがあいつを気に掛けるのは仕方のないことか。
「じゃあ僕、の様子見て来るよ。今頃、また泣いてると思うし」
「慰めるならちゃんと慰めなよ。軽薄な態度を取ったら夏油の精神病むぞ」
「わかってるよ。僕は性格確かに悪いけど、空気が読めないほどじゃない」
「そ。ならいいけど」
とか言いながら、五条は鼻歌を歌いながら医務室を出て行った。
絶対に軽薄な態度を取るだろ。
どの口がほざきやがる。
適当な事ばかり言うのは今に始まった事ではないけど、いい歳してんだからとは思う。
けど、そんな事絶対に口にしない。
面倒だから。