第23章 本音
そう思った時、漸く五条悟が口を開いた。
「……オマエのこと守ってやれなくてごめん」
「え……?」
「オマエが苦しんでる時に僕は僕のことしか考えてなかった。それでオマエを傷付けてしまった。ごめん」
何のことを謝っているんだろうと思ったけど、こいつはあの日の事を謝っているんだ。
そして茂木たちにやられたことも。
「あと、僕はオマエに嘘をついてた。それも謝る。ごめん」
「嘘……?」
「……僕はね、ずっと後悔しているよ。過去のこと」
静かな声が部屋中に響くのは、邪魔をする他の音がないから。
やけにこいつの声だけは大きく聞こえて、それが私の心臓や脳に直接刺さる。
「オマエが僕の目の前に現れたあの日から、嫌でも傑の姿がちらついて、正直ムカついた」
サングラスの横から見える青い瞳はどこを見ているのか分からない。
ただ私は五条悟の声に耳を傾けるだけ。
「ムカついたけど、同時に楽しかった。楽しくて仕方なかった。最初はただ監視対象で暇つぶしの玩具だと思っていたんだ。傑の妹の癖に弱いし術式理解してないし」
「悪かったな、弱くて」
まさかここで悪口を言われるとは思っていなかった。
それを言うためにわざわざ私を呼んだのか。
殺すぞ。
「そう、思ってたんだけどなぁ……」
「五条悟……?」
「心なんてどうでもよくて体さえ重ねることができればいいと思っていたんだよ」
何の話をしているんだ。
なんでいきなりセックスの話しになっている。
私は何かを聴き逃したか。
混乱しながらも独り言のように呟き続ける五条悟の言葉を聞いていた。