第23章 本音
一時間後に玄関に集合と言うことで、私も野薔薇も一度部屋に戻り準備をする。
女がする準備なんて一つしかないでしょ。
つまりメイクアップだ。
部屋に戻り、野薔薇にメイクをしてもらった。
本当は自分でやろうと思っていたけど、野薔薇は私の意見を聞き入れることはなく、部屋に引きずり込まれるように入って行った。
「私一人でもメイクできんだけど……」
「いいから黙って座ってなさい」
これ以上何か言ったらきっと野薔薇キレるだろうな。
そう思って口を噤んだ。
メイク道具を手にしながら、彼女は私の顔をじっと見つめ時折顔に触れた。
何をしているのか最初は分からなかった。
だが、その手つきや視線で理解してしまった。
「家入硝子に治療してもらったから傷は残ってないよ」
彼女は私の顔に傷が残っていないか確かめていた。
何度も顔を見合わせているのに、それでも確認したいとかどんだけ私のこと大好きなんだよ。
私も好きだけど。
「それでも自分の目で見ないと安心できないじゃない」
「じゃあ好きなだけ見ればいいよ。本当に残ってないから」
クスクスと笑いながらそう言えば、野薔薇はまじで自分が納得するまで私の顔をまじまじと見ていた。
時間にして10分くらいかな。
お見合いでもこんなに見つめ合うことないだろ。
そして満足したのか、漸くメイクに取り掛かった。
野薔薇曰く、名誉ある傷なら大歓迎だけどそれ以外は論外らしい。
その後、メイクをし終え私たちは玄関へと向かう。
既に待っていた男2人と合流し、4人仲良く買い物へと出かけた。
その様子はまた別の日に話そうと思う。
あまりにも楽しくておもしろくてあの伏黒でさえ笑うほど本当にずっと笑っていたから。
少しだけ長い話になるかもしれないけど、誰かに聞いてほしいって思ったんだ。