第23章 本音
電話を切ろうとした時、歌姫が僕の名を呼んだ。
「なに?」
≪……夏油は大丈夫?任務で大怪我したって聞いたけど≫
「大丈夫だよ。硝子の治療を受けたからね。ずっと食っては寝て食っては寝てをくり返してたからもう回復してるよ。今頃一年同士で買い物に行ってるんじゃない?」
≪そう、よかった……≫
「なになに。随分気にかけるじゃん」
≪当り前でしょ。数少ない野球オタク友達なんだから≫
「でもライバル同士なんでしょ?」
≪いいのよ、そこは。昨日の敵は今日の友って言うじゃない≫
まぁ、言うけど……。
歌姫はそれ以上何も言ってこなかった。
向こうの補助監督2人が拘束されたことを知らない訳がないだろうに。
詳しい事情を聞かないあたり、歌姫はやっぱりいい奴だよ。
歌姫との電話を切り、僕はスマホを操作し冥さんに一千万のお金を振り込んだ。
僕の生徒たちを一級術師に推薦するための報酬金額。
は既に一級任務を何度かこなしているが、正式に一級術師にはまだ成っていない。
きっと上が邪魔してそれを拒んでいるんだ。
傑の件があるからね。
はぁ、本当に上層部は腐りきってるね。
未来を担う子供の可能性を潰そうとしているんだから。
だからこそ、冥さんにお願いしたわけだけど。
きっとうまくやってくれるだろう。
「後は頼むよ、冥さん」