第23章 本音
入ってきたのは伊地知だ。
タイミングを考えろ、伊地知。
ぎろりと睨めばあからさまに肩をびくつかせる。
「どうした」
硝子がベッドのカーテンを閉める。
事情を知らない伊地知に彼女のこの身体を見せる訳にはいかないと判断したのだろう。
そういえば、彼女はずっと裸だ。
いろいろ情報量が多すぎて忘れていた。
僕は自分の上着を脱ぎ、彼女の肩にかけてやれば小さな身体はすっぽりと埋まる。
「茂木さんを拘束したので、一応報告を……」
「そうか。少し待ってろ」
「伊地知さん。今って、補助監督のリスト持ってたりしますか?」
「え?あ、はい……」
カーテンの向こう側にいる伊地知に話しかける。
補助監督のリスト……?
それがどうかしたのか。
「見せてもらってもいいですか?」
「えっと……」
「いいよ、入って」
硝子の承諾を得て伊地知がカーテンのこちら側へと入ってくる。
たった一枚の薄い布の隔たりが分厚く感じたのは、後にも先にもこの時だけだろう。
伊地知は彼女の姿を見て、目を大きく見開く。
みんなそういう反応になるよね。
固まったまま動こうとしない伊地知だったが息を吐き、手に持っていたリストを彼女に渡した。
何があったのか聞いて来ないあたり聡明だ。