第3章 受胎
――夏油side――
「とりあえずその怪我、硝子に治してもらおう」
あいつらがいなくなった後、五条悟はそう言った。
「いらない。そんなものいらない」
「出血多量で死ぬよ」
「だから?私が死んだら誰か困るやついる?お前は命を狙われることもなくなるし、あいつらは犯罪者予備軍がいなくなるから嬉しいだろ」
半ばやけくそみたいなものだった。
誰に心配されても、何を言われても。
もう私は死んだ。
私の心は死んだ。
白百合の受験票なんで破いたんだよ、私の馬鹿。
高専になんて行きたくない。
ここは生き地獄そのものだ。
零れる涙を手の甲で拭って、鼻を啜った。
瞬間、なぜか私は医務室にいた。
突然のことで思考回路が追い付かない。
え、なんで?
なんで急にここに来たんだ。
「硝子、いる?」
返事も聞かずに医務室の扉を開ける五条悟。
お前は扉をノックすると言うことを覚えろ。
インフルエンザぶりの家入硝子は、相も変わらず目の下の隈が濃い。
寝ろよ、と思うけど反転術式を他人に使える術者は少ないため重宝され忙しい毎日を送ってるという。
重宝しているならもっと大事にしろよ。
意味ねえだろ、この人倒れたら。