第3章 受胎
「……んだよ」
「何度も名前を呼んだよ」
「あ、そうなん。考え事してた。つか、手離せよ」
「」
無理やり顔を向けられている状態で、五条悟の顔なんて見ることができずに目線を反らしたのにそれすら許さないと言わんばかりの声色に、私の心臓は跳ねる。
恐る恐る包帯越しの男の目と自分の目を重ねる。
「なんでこんなことした?」
「こんな事ってなに。校舎を滅茶苦茶にしたこと?あいつらに突っかかったこと?それとも死のうとしたこと?理由なんて聞かなくてもわかんだろ。ムカついたからだけど。犯罪者の身内は犯罪者だと。間違ってねえけどな。でも、ムカつくだろ。だから死のうと思った。それだけだけど」
顎を掴んでいる手をはたき、私は口の中に溜まった血を床に吐き捨てる。
口ン中、切ったなこれ。
血の味がすげえ。
「私が死ねばいいだけの話だった。そうしたらお前も命狙われたりしないしな。望み通りそうしようと思っただけ。それでお前らが満足すんならいつでも………今すぐにだって死んでやる」
自分勝手が過ぎるだろうが。
意味わかんねえよ。
私にどうしろってんだ。