第20章 幸福
「あのさ」
目標に向かいながら私は口を開いた。
大人二人組が私の声に耳を傾ける。
「私、夢を見てマジでムカついて悔しかったんだけど……。でも、あの時、夢の中だけど私、今までできなかった事ができたんだ。火事場の馬鹿力って言うのかは分かんないけど。でも、自分の呪力をコントロールして、空気を変えた……って言えばいいのかな。うまく言えないけど、でも、できたんだ」
「が見た夢に自身、何かヒントやきっかけを貰ったってこと?」
「うん、そんな気がする……」
一度頷くと、五条悟は嬉しそうに私の頭を撫でた。
失敗しながらも、傷つきながらも、倒れても、子供はすぐに立ち上がる。
今はたとえ駄目でも、強くなって次のチャンスを子供は待つことができる。
無限のチャンスがやってくるんだから。
その可能性が私たちにはある。
そう、七海は静かに言った。
「七海の言う通りだね。失敗した分強くなれば、ご破算どころかお釣りがくるよ」
「……五条悟が先生みたいなこと言うと、なんでこう……うわって思うんだろう」
「それは五条さんの日頃の行いのせいでしょうね」
「おいコラ」
七海の言葉に賛同していたら、撫でられていたはずの頭はわしづかみにされた。
すげえ痛かった。