第20章 幸福
私は、夏油さんをそっと地面に寝かせるとゆっくり立ち上がり後ろを振り向いた。
そこにはもう二度と会う事のできない、懐かしい人物があの頃と変わらない笑顔でそこに立っていた。
「灰原……」
灰原雄。
呪術高専東京校の学生で、2級術師で、私の同級生"だった"人物。
黒髪の短髪で、呪術師には珍しく素直な性格。
人をあまり疑わず、常に周囲に明るく愛想良く振る舞う姿は、人を惹きつける魅力があった。
夏油傑を慕い、そして2007年の高専2年時、私と共に向かった呪霊の討伐任務に失敗し、命を落とした。
そんな彼が私に前に現れた。
「七海、会いたかった」
優しく微笑み灰原は、本当にあの頃と変わらない。
その表情が、姿が、私の胸を締め付けた。
私と正反対の性格の灰原。
最初は馬が合わないと思っていたが、意外と私と彼は馬が合い、たった二人しかいなかったと言うのもあるが、仲が良くなるのに時間はいらなかった。