• テキストサイズ

【呪術廻戦】新世紀の『I LOVE YOU』

第20章 幸福







『どうして拒むの?』
「うるせえ。消えろ」
『幸せなんでしょう?』
「うるせえっつってんだろうが。殺すぞ」

私を知っている奴なら、私から距離を置くレベルで睨み凄んでも"幸福"は少し困ったように、目をくりくりとさせた。
自分と同じ顔でそんなことをすんな、気持ち悪い。

"幸福"は先ほどの幻影と同じように、その姿は煌めいて霧となり消えた。

森は静かで、風の音しか聞こえない。
少し色を深めた空の色が木々の間から顔を覗かせ、昼間とは別の美しさがそこにあった。

私はただ、そこに立ち尽くし、握った拳が震える。
頭の中では、五条悟の言葉がゆっくりと過った。

【幸福というものを大人は信じることができないけど、子供は信じて受け入れることができる。でも、そのどっちも結局は幸福になれないなんて、人間って生き物はつくづく不幸だと思わない?ねぇ、七海】

あの時、理解できなかった言葉。
だけど、今は理解できる。

「……っ!!」

ただひたすら唇を噛みしめていたが、私はゆっくりと空を見上げ大声で叫んだ。

「ちくしょーっ!!」

私の悲痛な叫びは、誰にも聞かれることなく深い森の中に吸い込まれ消えていった。





/ 884ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp