第20章 幸福
私は五条悟に電話を掛けた。
もう怒られるのは覚悟して私を保護してもらうことが優先だ。
しかし、五条悟は出なかった。
もう一度電話を掛けてもコールは続いたまま出る気配がない。
「出ろし!!」
連絡すること、とか言いながらオマエが出ねえと意味ねえだろうが。
乱暴にスマホをポケットにしまった。
ぶつくさ文句を言いながら、私は再び歩き出そうと足を一歩前に出した瞬間。
背中に嫌な空気を感じた。
この気配……私は身に覚えがある。
一気に加速する心臓は脳に危険信号を発令している。
ゆっくりと後ろを振り返ると、私の数メートル先にそいつはいた。
特級呪霊の花御と漏瑚が、まっすぐに私を見ている。
一目散に逃げた。
今の私では特級2体を相手になんてできない。
死ぬのがオチだ。
そもそもなんでここに特級がいんだよ。
もしかして内通者とやらが私たちの居場所を教えたのか。
だとしたら誰だ。
イギリスの行くことを知っているのは上層部と私達3人。
まさか、七海とかじゃねえだろうな。
……いや、それは考えにくい。
だってあいつはあの時ツギハギ野郎と戦っていたし。
だけどそれが私達を油断させるための芝居だとしたら……?
七海がそんな面倒な事をするか?