第20章 幸福
私の望む幸せ……。
お兄ちゃんと一緒に暮らすこと、だったけど。
それはもう叶わないことだし、何よりそれはお兄ちゃんが生きていた時に臨んでいたことだ。
今は、今私が望む幸せってなんだろう。
それを与えてくれるって、どういうことだろう。
腹ごしらえもすみ、時刻を見れば9時少し手前。
目標がいる場所はロンドンから車で1時間走らせた森の中にいると言う。
五条悟曰く、景色でも楽しみながらふらふらと彷徨っているんじゃないかとのこと。
純粋だからこそ自由気ままで飽きればすぐにでも森から離れ、ロンドンの人たちを"幸福"へ導くと言う。
「猫みてえ」
「猫みたいに可愛げがあればいいんだけどね」
目標がいるであろう森の前に着き、私はすぐにでも鍵を取り出せるように、ポーチの中をいじる。
その時、七海が私の肩を叩いた。
「これが"種"です。もう、死んでいるようですが」
「……どういうことだ?」
「ついさっきまでこの森に人が立ちいってたんでしょう。"幸福"はそれに惹かれて着いて行ったが、見失い"成長"することなく死んだ」
七海は透明に輝く砂粒のような欠片を手にした。
よく見ればところどころ同じ欠片が見える。
「思ったよりもマズい状況ですね」
「そうみたいだね。この"種"は人の欲を吸って"開花"するんだ。"開花"すれば花粉が風に乗って同じように"開花"する。僕たちの任務は、"幸福"を捕らえ"種"を破壊することになった」
「開花した花は透明なのか?」
「そう。見ればすぐに分かる。呪力でいっぱいだから」
伏黒があの花の特級にぶち込まれた種子みたいだなと思った。
呪力を吸って開花するように、これは人の"欲"で開花するのであれば、面倒なことこの上ない。