第20章 幸福
「――ん、――うさん、――夏油さん」
身体を揺さぶられ、名前を呼ばれ、私の意識が浮上する。
定まらない視界の中、ぼんやりする輪郭を眺める。
「着きましたよ」
「……着いた、ってどこに?」
「イギリス、ロンドンです」
七海の声に、思考を巡らす。
イギリス……ロンドン……。
「あ、任務か」
「随分とぐっすり寝てたけど、ちゃんと寝れてる?」
「寝れてる、かなぁ。寝てる、と思う。うん、寝てる」
まだぼんやりする視界を、何度かこする。
周りを見ると、乗客全員降りる準備をしていた。
着陸のアナウンスも聞こえないほど私は深い眠りについていたのか。
シートベルトを外し席を立ち、飛行機から降りる。
空港からでもわかるイギリスの街。
日本を出発したのが15時。
イギリスは真っ青な空が広がっている。
つまり朝だ。
「時差ボケが怖いな」
「そうだね。今頃は日本はおやつの時間だろうから、あと数時間もすれば睡魔が襲ってくるだろうね」
「さっさと任務を終わらせましょう」
「その前に飯食わね?なんか腹減った」
「食いしんぼ」
「ずっと寝てたからなんも食ってねえんだよ」
異国の地でぎゃいぎゃい騒ぐ私たちは随分目立つ。
そうでなくても、白髪の目隠しをしたデカイ男と金髪のデカイ男に挟まれた女という構図は日本でなくてもヤバい絵面で目立つと言うのに。
更に言えば、白髪と金髪の男は整った顔立ちと長身だ。
モテない訳がないんだよなぁ。
寄ってくるナイスバディの金髪美女たちのナンパを、軽々と
で交わす二人。
慣れてやがる。