第20章 幸福
「でも、祓ったんじゃなくてなんで"封印"したんだ?そんなにやべえ奴なら祓えばいいのに」
「純粋な塊だからね。宿儺の指が強力な呪いなら、"幸福"は強力なエネルギーってところかな。封印はできても祓うとなると相当な勢力が必要になる。消し去るなんてことは難しいんだよ」
「そういうもんなんか……。んで、"幸福"の目的は、人類を滅ぼすこと?」
「正直、ちゃんとわかってない。本能に従って動いているって感じだよ」
「……はた迷惑だな。祓っちまえばいいんじゃね。また逃げられても困るし」
「それができたなら呪術全盛期の時代に祓っていますし、何より藤原道真がやってますよ」
「そりゃそうか」
"幸福"がどれ程の脅威であるかはわかった。
気を引き締めていかねえと、こっちがやられる。
イギリスに着くまであと10時間。
野薔薇から「Jo Malone」のフレグランスを買ってこいとのラインが来た。
旅行じゃねえんだよと思いながら「気が向いたら」とだけ返しておいた。
虎杖と伏黒も「お土産よろしく」とラインが来たけど、任務だからそんな余裕あるわけねえだろ、と思いながら野薔薇に返した返事と同じ返事をあいつらに返した。
横を見れば、七海と五条悟は既に睡眠に入っていた。
規則正しく上下する胸を見ながら私も静かに瞳を閉じて、長い長い夢の中へと沈んでいった。