第13章 狂愛
斎藤廉の独白を聞いた夏油は、唇を震わせていた。
「……ふざけんな。中途半端な優しさなんていらねえんだよ‼」
「夏油、落ち着け」
伏黒の制止の声すら今の彼女には届かない。
「こっちはな!!オマエらの中途半端な優しさですら命綱なんだ‼突き放すくらいなら最初から関わってくんじゃねえ!!好きでもねえくせにその場しのぎの言葉を投げんな!!虐められてる側はな、いつだって本気なんだよ‼全てが"本音"にしか聞こえねえんだよ!!!!」
いじめを受けていた側だからわかること。
静かに流れる涙を拭うことをせず、夏油は斎藤廉を睨み続けている。
夏油も同じように裏切られたことがあるって事よね。
優しくされて、それを信じて、でも裏切られて。
罵倒されて、後ろ指をさされて、死刑宣告を受けて。
………よくまだ人と関わろうと思えるわね。
私が夏油の立場だったら無理。
それこそ呪詛師になってしまうかも。
でも夏油はそっち側ではなくこっち側を選んだ。
それが彼女の決めた生き方なのだとしたら、夏油が強くて弱い理由がなんとなくわかった気がする。
「………優しさだけじゃ、人は救えねえんだよ。強さがなくちゃ。オマエの優しさはあいつを救ったと同時に傷つけたんだ。本当に助けたいなら、中途半端なことはすんな。それはいじめと変わんねえよ」
袖で涙を拭いながら、夏油は斎藤廉の胸倉から手を放した。
床にへたり込む彼を背に夏油は歩き出す。
黙ってそれを見守りながら、私も伏黒も彼女の背中を追いかけた。