第13章 狂愛
「答えろ。気づいてたのか、気づいてなかったのか。どっちだ」
「………気づいて、ました」
「気付いてて、いじめの相談に乗ってたのか」
「………………」
「ずっとそばにいてやるって言ったくせに、突き放したのか。助けてやるって言って、見放したのか!!」
夏油の怒号が響きわたる。
少年の胸倉を掴んでいる彼女の手は震えていた。
ああ、そうだった。
夏油もいろんな人から恨まれて憎まれていじめなどを受けていた立場だった。
詳しくは聞いていないけど、そう言う話を少しだけしたっけ。
だから、小林茜に同情しているのね。
アンタも似たような経験してるから。
「………いじめ、の相談を受けてて。その時は本当に助けてあげたかった。側にいて、それが助けになるって……」
「じゃあ、なんで見放した。オマエの言葉があいつにとっちゃ救いだったんだよ」
「見放すつもりはなかった。ただ……」
涙交じりの声が静かな空間を満たす。
「茜の好意には答えられなかった……」
「………」
「……俺、好きな人がいたし……。助けてあげたかったのは本当だけど、好きでは、なかったから……」
「じゃあ、なんで側にいてやるって言ったんだ。オマエも好きじゃなかったのかよ」
「そう言えば、少しは元気になるかなって……」
………これは、思わせぶりな態度を取った斎藤廉が全面的に悪い、と言えないこともないような気がするわ。
彼なりの善意で助けてあげたくて、その場の優しさを見せたら向こうが好意を寄せたが、好きな人に好きな人がいることを伝えられ……ってところよね。