第13章 狂愛
落ち着きを取り戻せば、教員は静かに話してくれた。
あの掛軸に描かれていた女の生首は、小林茜。
1年前に自殺した女子生徒だという。
「自殺……」
「自殺した理由はなんですか」
「それは……、その……」
歯切れの悪くなる教員に、私も野薔薇も伏黒もピンときた。
「いじめ、ですか」
「は、はい……」
小さな声ではあるが、教員は頷いた。
これだけ委縮しているということは、随分と酷いいじめだったのか。
学校生活において「いじめ」というものはとても繊細な問題だ。
教師にとっても生徒にとっても。
とはいうものの、こうしていじめを苦にし自殺したとなれば、問題は教師や周りの生徒にあると思うけどな。
人一人追い詰め、追い詰められた人間がどんな気持ちになるか想像力が足りないのか、脳の一部が欠陥しているのか分からないけれど、一貫して言えることは、人の痛みを知らない人間はクソオブクソだということ。
「小林茜は、とても絵のうまい子でした。県での絵画コンクールで賞を獲るくらいに。将来は画家になりたいという証言を彼女の友人数名から聞いたことがあります」
絵がうまかったのか……。
呟いた瞬間、脳裏に蘇るのはあの生首。
思い出してブルリと肩が震えた。
「大丈夫か?」
「平気。ちょっと思い出しただけ」
はぁー、と息を吐いて気分を落ち着かせる。
どくどくと脈打つ心臓の鼓動を聞けば、少しだけ安心するのはなんでだろうか。