第5章 特級
少年院の入り口前。
この入り口に入ってしまえば、後戻りはできない。
早く生存者を見つけるしか、ここを出る方法はない。
「"帳"を下ろします。お気をつけて。"闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え"」
伊地知さんが帳を下ろした。
今回は住宅地が近いため、外から私たちを隠す結果が帳。
伏黒は玉犬・白を出した。
「呪いが近づいたらコイツが教えてくれる」
「行くぞ」
扉に手をかけ、私たちは中へと入った。
そして自分の目に映る光景に目を疑った。
確かここの少年院は2階建てだったはずだ。
なのに、なぜこんなにも建物内が大きいんだ。
「呪力による生得領域の展開……?」
「扉は⁉」
考えられる一つの考察。
私の言葉に一番に反応したのは伏黒だった。
慌てて後ろを振り向けば、そこに扉は存在しなかった。
さっき確かに私たちはそこから入ってきたのに。
「ドアがなくなってる!!なんで⁉今ここから入ってきたわよね⁉」
「釘崎落ち着け。伏黒の式神がいる」
「ああ。コイツが出入口の匂いを覚えてる」
玉犬・白に抱き着く虎杖と釘崎。
緊張感がない。
苛立ちと不安が私を襲っているからこそ、今こいつらの緊張感のなさが心底腹が立つ。
「やっぱ頼りになるな伏黒は。オマエのおかげで人が助かるし俺も助けられる」
白い歯を見せて笑い虎杖を伏黒は視線を落とし、反らした。
何か思うところがあるのだろうが、伏黒が何を考えているのか私にはわからないから、何も聞かなかった。
「進むよ」
道に沿って歩を進める私たち。
道の先、広い場所へ着いた私たちは息を呑んだ。